世の中、原因不明の慢性蕁麻疹に悩まれる人が多いが、その多くの人が舌の奥に黄膩苔を蓄えている。
この黄膩苔の存在が明らかであれば、慢性であれ急性であれ、多くの場合は茵蔯蒿湯(インチンコウトウ)証である。すなわち肝胆に湿熱を蓄えている証拠で、このような安価な方剤で治るなら、経済的にも大助かりのはずである。
念のために吸収率のよいカルシウム類を併用しておけば、黄膩苔を蓄える人なら百発百中に近いのではないかと大言壮語したくなるほど、この四十年近くの漢方相談経験から言えることである。
ところが、当方に来るまでに散々保険漢方はもとより、地元の漢方薬局で様々な配合を駆使されても一向に治る気配がなかった人達でも、これこそ方証相対の極み、遅かれ早かれ治癒に向かった例の枚挙に暇がない。
しかしながら、コリン性の蕁麻疹に対しては、これまで一度も奏功した経験がなく、清熱涼血解毒方面の配合方剤が必要な人達ばかりであった。
おそらくコリン性蕁麻疹と肝胆系の湿熱とは直結しない部分があるように思われる。
といってもあくまでケース・バイ・ケースで、必ず的確な弁証論治に基いて考慮されるべき問題である。
参考文献:
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蕁麻疹の漢方薬:漢方薬局経営薬剤師の一喜一憂
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蕁麻疹の漢方薬:漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告
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(C)ヒゲジジイ
もともとオルスビー錠が逆流性食道炎に有効な例があることを報告したのは、筆者が主催する他のブログ、
漢方薬専門・村田漢方堂薬局(山口県下関市)の近況報告において、
2007年02月15日 逆流性食道炎に対する安上がりな漢方薬
と題して発表したものを嚆矢とする。
それがいつの間にか、検索からも消え、宣伝上手な他サイトでは「安くてすいません」などと嘯くブログすら現れる始末(苦笑。
たしかに安価なものなので、地元で調達して試してもらえば5割前後の確率とはいえ、少しはお役に立てるかもしれない、世のため人のため、老婆親切から上記のブログを書いたものだった。
しかもこのオルスビー錠は第3類医薬品であり、あまり体質を考慮しなくても、ほとんど副作用の心配がない。
しかしながら、ネット上の販売店で盛んに宣伝されるほど、オルスビー錠単独で皆がみなに効くものではないので、そのことはここでしっかりと強調しておきたい。
人の褌で相撲を取るのもいいが、ほどほどにしておかないと、ダイエットに防風通聖散などとまことしやかな嘘がまかり通るのと同レベルに堕することになる。
もともと上記のブログに書いているように、過去の事例から5割の人に有効ではないか?と書いているように全員に効くとは書いてないはずだ。
ところで最近、
ブログの閲覧者から匿名のメールで、オルスビー錠で却って調子が悪いという女性が2名あったことから、少数の人には合わない可能性がある。
このような逆効果であったという報告を受けたのは初めてであるが、1~2例でもあれば看過することはできない。
またオルスビー錠がフィットする場合でも、人によってはオルスビー錠だけでは効果が弱いようにも書いていたと思うが、これまで多くの逆流性食道炎の人達の漢方相談を受けて、一般漢方処方を併用してもらいながらも、男女それぞれ一名ずつ、ほとんど効果が出なかった人もいる。半年前後は頑張られたが、どうしてもこのお二人には効果が少なかった。
但し、遠方の人達で、当時は一度来られただけで、あとはメール相談というのがまずかったように思われる。
7~15日毎に通いつめた人達は全員、ほぼ寛解しているからである。
もちろん、
オルスビー錠だけで改善した人も多かったとはいえ、現実にはやはり弁証論治に基づいた適切な一般漢方製剤を併用した方が、明らかに効果は上がる。
なかでも大柴胡湯証を呈している人が最も多かったが、ササヘルスとオルスビー錠の併用で治った人もかなりいた。
世間で噂される逆流性食道炎に六君子湯というパターンは、当方の薬局に限っては極めて小数派に過ぎなかった。
漢方処方を併用する場合には必ず体質に応じた配慮、つまり弁証論治にもとずく適切な方剤を選ぶことが必須となる。
現在進行形でも9つの重大疾患を抱える人が、この逆流性食道炎に関しては大柴胡湯+オルスビー錠で、明らかに症状が激減して大いに喜ばれている。
ともあれ、いつの間にか、オルスビー錠が逆流性食道炎の特効薬みたいに宣伝するブログもみられるが、ちょっと過剰宣伝が過ぎではないですかっ?と窘めておきたいものである。
そのほかの関連ブログ:
逆流性食道炎とオルスビー錠の中でも、
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オルスビー錠が逆流性食道炎に効果があったとのご報告と質問
という報告もあれば、これとは真逆のケースの報告もある。
※
逆流性食道炎にオルスビー錠が合わなければ即刻中止すべきです
その後の分析から次のような類推がなされるようになっている⇒
オルスビー錠が逆流性食道炎に効果を発揮しやすいタイプが判明したかも
補中益気湯はもともと黄耆(オウギ)と白朮(ビャクジュツ)の配合によって、表衛不固による自汗を治す作用を内在する方剤である。
ところが、一部の医療用の補中益気湯エキス製剤では白朮が配合されずに、その代わりに軽度の発汗作用を有する蒼朮(ソウジュツ)で白朮の代用にしている医療用漢方製剤が存在する。
これは些か問題があり、本来の補中益気湯の作用をフルに発揮できるものではない。
間違いだらけの漢方と漢方薬によれば
白朮と蒼朮の最大の違いは、白朮は固表止汗して黄耆(オウギ)がないときの代用品になるくらいだが、蒼朮は逆に散寒解表して発汗作用があるので決して黄耆の代用とはなり得ない。
━白朮を蒼朮で代用する日本漢方の杜撰
ということから考えても、
五苓散中の白朮を蒼朮で代用されるのとは問題のレベルがさらに大きいように思われる。
以上のことからも分かるように気虚系統の治療方剤は、いずれも白朮とあるところは必ず白朮でなければならず、蒼朮で代用できるものではないはずだ。
ところがその代表的な医療用漢方製造メーカーさんでは、補中益気湯のみならず六君子湯や十全大補湯など、多くの補益の方剤が、いずれも正しく白朮が配合されずに蒼朮で代用されている点については大いなる疑義を感じている専門家は多い。
おおよそ数えると三十数処方以上。
日本の医療界および漢方界のためにも早急に是正が求められる。
重要参考文献:
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白朮を蒼朮で代用する日本漢方の杜撰
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日本漢方の後進性の証明は医療用ツムラ漢方の補中益気湯や六君子湯中の白朮を蒼朮で代用する錯誤もその一つ
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補中益気湯や六君子湯中の白朮を蒼朮で代用する錯誤問
小青竜湯はしばしば希薄透明な鼻水が止まらない時や、それに伴うくしゃみ、あるいは逆にくしゃみに伴う流れるような水様性の鼻汁が止まらない時に効果を発揮する。
透明で水様性の鼻水が流れること自体が多くは肺が冷えている証拠で、肺の宣発と粛降作用にトラブルが生じた状況下では、しばしばくしゃみやそれに伴う水っぽい鼻水が流れ出たり、あるいはまた水っぽいやや多目の豁痰を伴う咳嗽が生じるが、これらこそが小青竜湯証の一連の症候としてよくみられる。
しかしながら咳嗽をともなわない場合は、多くは小青竜湯よりも安全性の高い藿香正気散(カッコウショウキサン)で十分に代用できる。
いや、代用できるというよりもこちらの方が適切な場合も多い。
とりわけアレルギー性鼻炎や花粉症において、湿邪が体内に停留しているような状況下で風寒に侵襲されれば、まるで小青竜湯証と区別がつかないほどである。
であるなら胃腸にもやさしく細辛や麻黄という注意を要する生薬が含まれない藿香正気散を使用するほうが無難である。
小青竜湯も藿香正気散も薬性は辛温で肺系統を温めつつ乾燥させる働きが強いので、症状が治まったら連用するには及ばない。
症状がしっかり治まっているのに長期連用すると、しばしば乾燥性の咳嗽が勃発していつまでも治らなくなるので、多くの場合、連用は慎むべきである。
必要もないのに漫然と長期間服用し続けると、肺陰を損傷してこのような乾燥咳が生じるばかりでなく肺陰虚による虚熱が生じるばかりでなく、容易に肺熱を生じさせてしまう恐れが大である。
ところで、以前から巷では花粉症やアレルギー性鼻炎に小青竜湯が乱用気味となっており、くしゃみや鼻水、あるいは咳嗽でもあろうものなら、その症状だけで弁証論治を行わないまま無作為に小青竜湯を投与される医師が多いが、これこそ大間違いの元である。
同様な症状があっても、すべてが小青竜湯証とは限らないからである。
くしゃみ・鼻水・咳嗽のいずれにおいても、寒熱や燥湿において真逆のケースも多く、辛夷清肺湯証のように肺熱に肺陰虚の病機によって類似した症状を発することは珍しくない。
このことに暗いために、というか中医学の基礎理論はおろか、漢方医学のイロハにも疎い医師たちが、肺熱に肺陰虚の病機に適応する辛夷清肺湯証であるにもかかわらず、小青竜湯が投与されていたケースが実に多いのである。
このような間違った投与が行われると、次第に頑固な乾燥性の咳嗽が続いて、豁痰に血液が混ざるようになり、肺癌になったかと患者さんたちを不安に陥れている例は、枚挙に暇がないほどである。
参考文献:
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注意が必要な漢方薬(肺陰を損傷しやすい漢方処方)
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小青竜湯の副作用あるいは乱用問題
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やっぱり長期連用には不向きな小青竜湯など
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藿香正気散(カッコウショウキサン)
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藿香正気散 (かっこうしょうきさん)
現在、もっとも乱用されている漢方薬の一つが小青竜湯や大建中湯であると思われる。
昨今、ほとんどの西洋医学畑の医師たちが、アレルギー性鼻炎や花粉症などに病名治療薬として乱用されるから、そのために様々な副作用を呼んでいる。
小青竜湯は肺失宣降・水飲内停の病機(病理機序)に対する宣肺降逆・温化水飲の治療効果を発揮するが、現実的には肺寒停飲の病機のある気管支喘息などに使う機会はあっても、アレルギー性鼻炎や花粉症では、胃に負担をかけず安全性の高い玉屏風散(衛益顆粒)や藿香正気散で十分なことが多い。
但し、幸か不幸か、この2つのエキス製剤は、保険適用品が存在しないので、保険医から投与を受けることができないので、自費で調達せざるを得ない。
そもそも日本の医療用の小青竜湯は細辛と乾姜において問題が多いのである。
細辛はやや毒性があり、あらゆる処方で日本より使用量が多い中国でさえ、1日量が3gを超ないほうが無難であるとされる生薬である。
ところが日本の医療用の小青竜湯製剤では、細辛が3g使われ、乾姜は例によって飴色に蒸した煨姜もどきが使用され、本来の乾燥生姜とは薬効において明らかに異なる。
それゆえ、昨今の様に漢方経験の少ない多くの医師たちが小青竜湯を乱用するものだから、
タミフルと共に医師から処方された禁忌に近い危険な配合、麻黄細辛附子湯と小青竜湯という禁忌に近い投与が行われている。
これでは細辛が二重になって1日量が3gを遥かに超えて危険である。
中国では昔から、細辛を粉末で用いるのに、一銭(約三グラム)を越えてはならない。多すぎた場合は悶死してしまう、とて戒めていました。 ━漢方薬の安全性の問題についてより引用
とあるように細辛配合剤を乱用するべきではないのである。
現実的には副作用を生じやすい配合生薬は、細辛ばかりでなく麻黄の問題も大きい。
ましてや上記のように小青竜湯に麻黄附子細辛湯(麻黄細辛附子湯)を併用投与する禁忌に違い配合が行われれば、細辛が倍量になるばかりでなく麻黄も倍量となり、高齢者や虚弱者の場合、かなり危険である。
麻黄の主成分はエフェドリンであり、交感神経を刺激するので過剰投与されれば、様々な副作用(動悸・異常発汗・血圧上昇・異常興奮・胃障害など)を生じても不思議ではない。
たとえばしばしば見られる肺熱のある辛夷清肺湯証の人達にも、漢方知識の乏しい医師達により小青竜湯が投与されており、そのために様々な副作用にコリゴリして病院漢方を断念し、当方に相談に訪れる人達があとを絶たない現実がある。
いずれにせよ、昨今の小青竜湯の乱用は目に余るものがあるので、さしあたり問題のあった事例の一部をブログに書いているので、そのリンクを以下に掲載して参考に供したい。
医療用漢方の小青竜湯による誤投与や不必要な長期連用による副作用と思われる事例集
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耳鼻咽喉科で処方された小青竜湯による副作用
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耳鼻咽喉科で処方された小青竜湯による副作用の続報
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小青竜湯の長期連用による副作用
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高齢者に要注意の小青竜湯(副作用の認識がない医師たち)
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小青竜湯連用によって生じた乾燥性の咳
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小青竜湯と麦門冬湯のどちらでも良いと医師に言われながら出された小青竜湯に疑問をお持ちの親御さんからのお問合せ
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小青竜湯誤投与の典型例
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タミフルと共に医師から処方された禁忌に近い危険な配合、麻黄細辛附子湯と小青竜湯
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やっぱり長期連用には不向きな小青竜湯
これ以外にもまだまだあったが、見つかり次第追加して行きたい。