補気建中湯のことばかり、連続四回にも渡って書いてきたのは、既に述べたように、エキス製剤として、製造して欲しいからである。
こういう大変デリケートな時期に適応がある方剤は、煎じ薬で出すのもよいが、即座に対応できる体制としては、エキス製剤、つまり顆粒剤などに越したことはない。
ある中国の中医師は、小生と直接お会いした時に、日本のお陰で、精度の良いエキス製剤が作れて、中国でも大いに助かっている、と喜ばれたことがある。
本場の中国でも認める日本の技術である。
この技術を、あらゆる重要方剤に応用して製造しないてはないではないか!
既に述べた如く、小生の漢方薬局では、癌や悪性腫瘍の末期、腹水が繰り返し貯留して、どうしようもなくなった時期、必ず医師の許可と同意が得られた場合でなければ、もはやお出しすることはない。
もちろん、当方とて、れっきとした薬局を経営している薬剤師であるから、医薬品製造業の許可を得ており、煎じ薬の補気建中湯を製造することはできる。
しかしながら、昔の冒険家の時代、若き血気盛んな時代は終ったのである。
この難しい時代に、当方の保身も充分に配慮しなければならない、イヤな時代である。
それゆえ、かなり自由がきく、医薬品としてのエキス製剤を、奇特な漢方専門の製薬メーカーが出現して、実現してくださることを、切に望むものである。
ところで、現実問題としては、昨今では補気建中湯に敢えてこだわらなくとも、分消湯製剤を主軸にして補中益気湯などの補脾益気の方剤とともに五苓散製剤を合方することでバランスの取れた扶正袪邪により、代用どころか上回る効果を発揮することもある。
補気建中湯を製造するメーカーが出現しない限りは、却ってこの方法の方が良いかもしれない。
また、体力が十分ある段階では、やはり分消湯製剤を主軸にして茵蔯蒿湯製剤や五苓散製剤、あるいは三者の合方を主体して一定の効果を得ている例も現実にある。
ところが、このような腹水で困っている状態で、ネットで調べたといって様々な健康食品を求め続けるお問合せには、説明や説得する気力すらまったく失ってしまう昨今である。