補気建中湯(ホキケンチュウトウ)は腹水に効果を発揮することが多い方剤で、病院治療でもお手上げになった時点でも、充分効果を発揮することが多い。
実際に使用するときは、当然のことながら、漢方の専門家や主治医との相談の上で試してみるべきである。
経験上は、梅寄生と竹寄生(かわらたけ)の二味を加えていた期間も長く、最近では他のキノコ系統のたとえばソ連産のチャガなどケース・バイ・ケースで臨機応変に各種のキノコ類を併用してもらって、補気建中湯オンリーで服用してもらうケースは少ない。
幸いに補気建中湯がびっくりするほど効果が出ても、もともとの基礎疾患が並大抵のものではないことが多いので、一時的なものに終ることが多いかもしれない。
腹水や胸水の原因は、現代では癌や悪性腫瘍からのものが断然多いが、本方剤は、腹水ばかりでなく「胸水」に対しても連動して効いてくれることが多いので、重宝である。
肝臓ガン末期の腹水が最も多く、腹部から発祥した悪性リンパ腫の再発転移による腹水・胸水にも、大学病院に入院中に服用させてもらって、シャープに奏効した経験がある。
ただ、この方剤を使う必要がある段階では、かなりな末期のことが断然多かったので、ひどい吐き気を伴っているような病状のときに、服用させる家族も大変であるが、末期症状から来るこの吐き気や嘔吐にしも、補気建中湯が、かなり奏効して、楽になることも多い。
小さじに少しずつ、数十回に分割して、ようやく効果を発揮するなど、また煎じる苦労など、家族は大変ではあるが、それに伴う良好な結果が得られることも、多いのである。
この腹水ばかりは、とりわけ、超末期の場合は、一時的な効き目に終るにせよ、断然、補気建中湯のほうが有利であった印象が強いとはいっても、体力がしっかりあってそれほど末期ともいえないケースや末期であっても補気建中湯が意外に奏功しないケースでは、分消湯など他の方剤がフィットすることがある。
弁証論治の原則から考えても当然のことである。
つまり末期癌に伴う腹水だからといって必ずしも補気建中湯が絶対的に奏功するとは限らない。
ところで、
補気建中湯のエキス製剤が望まれる所であるから、各漢方製剤の製造メーカーさんに、ここ十年くらい、お願いしてきたが、どこも作ってはくれなかった。
210処方の中にはいっているのだから、やる気でやれば製造許可は得られているはずである。
各社、採算性の問題から二の足を踏んでいるのは明らかであるが、こんな素晴らしい方剤を、がん患者さん達を沢山扱う医療機関にでも売り込めば、採算が合うんじゃないか、と思うのだが、まだ混合診療が認められない時代だから、難しいのか?
(後日談:煎じなくてもよいエキス製剤が実現した
⇒
念願の補気建中湯エキス製剤が新発売されたっ!)
なお、補気建中湯に配合される「朝鮮人参」が、どのような役割をなしているのか、
「漢方と漢方薬の真実」サイトの平成17年6月30日の日録の中で、少し解説しているので、参照されたし。
上述の「漢方と漢方薬の真実」サイトは近々にも閉鎖される可能性が高いので、他のブログでも解説しているのでこちらの方を参照されたい。
⇒※2012年05月27日 腹水や胸水にも有効なことがある補気建中湯にはなぜ保水力の強い人参が配合されているのだろうか?
その他の関連ブログの記事: 癌性腹膜炎・腹膜播種・腹水や胸水と漢方薬