前回の「芍薬甘草湯」に、柴胡と枳実が加わったもの。
日本古方派を信奉していた頃、だから、今から二十五年前くらいまで、この四逆散の方意が、どうしても理解できずに難儀していた。
使えなかった。適応症がさっぱり分からないのである。
『傷寒論』などの条文や、解説書をいくら読んでも、理解できないのである。
それが、突然のように繁用しだしたのは、やっぱり中医学の基礎が理解できてからだった。
いくら日本古方派の人々の口訣や、解説書を読んでも理解できないのは、わずか四味の配合で、様々に言われても、理論的根拠に乏しい「お話」だけでは、理屈屋の小生には、理解のしようがなかったのである。
やっぱり基礎は大事!
基礎理論としての全体観が、自分なりに出来上がってないと無理だろう。
だが、ここでは、そのようなカタグルシイ理論方面は、省略する。一応の基礎を学習を済ましている人に対する「口訣」のつもりで開いたブログである。
要約すれば、現在、最も頻繁に使っているのが、「鬱病」、あるいはそこまでの病名がつけられなくとも、あきらかな「鬱」(うつ)傾向のある人が対象である。
こんな調子で、四逆散のことを書いてゆくと、どこまで延々と続くかわからない。
前回の芍薬甘草湯でも、まだまだ書くことはあったが、将来、気が乗った時に、こっそりと前文に追加補足しておくつもりだ。
四逆散の一番の目標は、溜息(ためいき)や、くりかえす深呼吸である。
女性なら、生理前に「お乳が張って痛い」というのも、参考になる。
その時代・時代で、漢方薬方剤も繁用される方剤があって当然である。
ところが、各社、漢方専門メーカーに訊いてみると、意外やイガイ、あまり使ってもらえないそうである。
実に不思議なものである。
真正の「鬱病」であれば、重症でない限りは、かなり奏効する場合が多いのである。
ただし、
病名としては専門医によるしっかりした診断は欠かせない。総合失調症やパニック症候群などには、あまり適応しない。
(蛇足ながら、この方剤、だいぶ以前、地方の名士で、人格的にも優れた方に、激務による精神疲労に服用してもらったところ、著効を得て、それ以来、何年にも渡って、四逆散の適応症の人を見抜いては、当方に患者さんを送って寄越される。素人ながら、素晴らしい眼力である。)