本来「疏経活血湯」が正解のはずだが、昨今では「疎経活血湯」で通っているようだから、両者を併記した。
「疏」と「疎」の違いですよ!
前回はちょっとキザっぽく学術風にやってみたが、今回はもとの調子に戻して、本方の総括的な有用性を簡単に述べたい。
よく、腰が痛い痛いといって通院治療したくなるような段階で、本方剤が適応することがとても多くなる。当方は漢方専門の薬局だから、病院や針灸・整体などに行っても治らなかったという人ばかりが来られるのだが、その段階でも疎経活血湯の適応者が実に多い。
当方に来るまでには、どこかで本方が出されていそうなものだが、意外にそうでもないらしい。
本方剤単方では効かなくなっているのかと思えば、やはりそうでもない。少なくとも半数近くが単方でも有効である。もちろん、製造メーカーによる精度の優劣があるのは天然資源を原料とする漢方薬の宿命であろうから、仕方ないだろう。
エキス濃度ばかりを気にする専門家が多いが、濃度以上に大切なのは使用されている品質の問題なんですよ!
濃度なんて、あとからどのようにでも調節できる。ところが、品質問題となるとどうしようもない。粗悪なものを使用されていれば、濃度や力価の問題どころではないのである。
いわゆる坐骨神経痛に適応者が大変多いのだが、時に本方ではまったく無効の人がいるのは当然のことで、しっかり体質をはあくして、適切な方剤に切り替えなければならないが、あえて病名治療的に考えれば、坐骨神経痛の一番手は「疎経活血湯」でしょう、ということです。
古方派時代には、桂枝茯苓丸や芍薬甘草湯を主体に運用することが大変多かったのだが、普遍性からいって、一般的な坐骨神経痛には「疏経活血湯」の方が無難であり、作用も激しくない。
だから専門家でも腕に自信がない場合は、まずは本方を試してもらい、その間により適切な方剤はないか、考えても遅くはないだろう。無理は禁物である。
本方が効かない場合はどうするか? 再度正確な弁証論治にしたがって、様々な方剤を駆使すれば、西洋医学では手術以外に方法が無いと言われた人でも、漢方薬によって多くの人が手術を免れている。三十数年間の仕事で、その人数はかなりものになっているが、ケース・バイ・ケースの個別的な創意工夫が必要な分野だけに、総括的な言説は不可能である。
といっても時には本方「疎経活血湯」でも驚くべき偉効を発揮することもあるのだから、馬鹿にならない。
数年間に渡って鎮痛剤・消炎剤の連用とコルセットまでしても、ますます悪化する一方の四十代女性に、おそらく鎮痛剤の長期連用により却って活性酸素が増えて、よけいに疼痛が激しくなったのだろうから、こころみにすべての鎮痛消炎剤を中止してもらい、血行を却って悪くしている可能性の高いコルセットも廃止してもらい、疏経活血湯のエキス錠とカルシウムとミネラル補給等の方法で、わずか一週間で疼痛の8割が消失した例がある。
再発を恐れて、既に数年、疎経活血湯のエキス錠だけを常用されているが、現象的にはまったくの無症状で現在に到っている。