藿香正気散は夏風邪用の漢方薬として有名?ではないかもしれないが、少なくとも専門家の間では常識である。常識ではあるが、本当の常識は、現代社会においては季節を問わず、どんな季節であっても胃腸型感冒にすぐれた効果を発揮する。
吐き下しをするような胃腸型感冒には
五苓散などと同様とても重宝で、藿香正気散があるお陰で、へたな西洋医学治療には負けることが無い。
但し、咽喉腫痛をともなっている場合は、銀翹散系列の方剤と併用するのも常識である。胃腸症状にばかり気をとられて、藿香正気散ばかりに頼っていると、胃腸症状は軽快しても、咽喉腫痛を伴う発熱には対処できない。
だから必ず専門家に相談して使用しなければならない。食欲増進作用など胃腸にはとても優れた効果を発揮するものだが、その優れた作用も乾燥性あるがゆえであり、体内の乾燥剤と思うと分りやすいだろう。
だからその分、効き目が良いからと言って、だらだらといつまでも連用していると、潤いの必要な粘膜まで乾燥させすぎる場合があるので、不必要に連用すべきではない。
応用としては、悪阻(つわり)によくフィットする体質の人があるが、やや寒がりで胃が冷える傾向にある場合に最適である。
それよりもまして特筆すべきは、花粉症など発作的な鼻炎症状で無色透明でサラサラした鼻水が止まらない時、意外な即効がある。
この速効性には目を見張るものがあり、恐らく西洋医学治療を凌駕すること請合いたくなるほどである。
胃腸にもとても良いだけに、やや野蛮な(苦笑)小青竜湯を考える前に、まず藿香正気散を使ってみるほうが無難であろう。
他にもクーラー病で、夏の冷房にあたって頭痛がするときにも速攻がある。冷房病では欠かせない漢方薬である。もちろん冷房にやられて胃腸がおかしくなった時にもうってつけである。
涼を取るためにビールを飲み過ぎておかしくなったときや、暑さに負けて海や川で身体を冷やしすぎて、かえって気分が悪くなった時、冷たいものを過飲して吐き下しするなどにも、これから暑くなるにつれ、利用する機会が激増するとても便利な方剤である。
ようするに、体内の乾燥剤なんですね、この藿香正気散は!
・参考ブログ: 夏の感冒・暑さによる食欲不振に効く藿香正気散だが・・・・やや専門的な参考文献: 藿香正気散