風邪には銀翹散製剤(天津感冒片や涼解楽)こそが主役!、葛根湯ではほとんど無効の続編である。
現代の風邪やインフルエンザにおいて、「狭義の傷寒」と温病の区別がつかずに、すべて傷寒論医学で解決できると主張する考えもあるようだが、現実にはやはり『温病条弁』(呉鞠通著)で一躍脚光を浴びて以来、現代日本でも重宝される銀翹散系列の方剤は不可欠である。
(注: 広義の傷寒とは、外感風寒による狭義の「傷寒」および外感風熱による「温病」などの外感熱病の総称。)
傷寒か温病か、区別がつきにくい理由は以下の引用文で示す理由によるものと思われる。
漢方と漢方薬の真実:平成18年5月13日より、ピックアップ
一時的に衛気不固(衛気の虚)に陥った者が、その虚に乗じて皮毛より寒邪を感受し、同時に口鼻からは温熱の病毒(ウイルス)を吸入したために悪寒発熱・頭痛・咳嗽・咽喉腫痛などを生じる。これ即ち傷寒と温病の合併証である。
この愚説(珍説)については、調査した限りでは
どの中医学書にも書かれていない傷寒と温病の合併証という病態認識である。
現代医学から見れば非科学的に見える上記の考察だが、構造主義科学としての中医学的観察では、現実に上記の証候を呈する咽喉腫痛を伴う感冒やインフルエンザで最もよく見られる病態であることは、ほぼ間違いないと愚考するものである。
しかしながら、傷寒と温病を併発するインフルエンザや咽喉腫痛を伴う感冒では、温病の勢力が強い為であろう、傷寒による証候は短期間で終わることが多い。
それゆえ、傷寒に対する参蘇飲や葛根湯、あるいは麻黄湯類を使用可能な時期は、初期の短期間に限られるケースが殆どである。
それにも関わらず、葛根湯などで少し効果があったと思ったところで、そのまま継続していると、ウイルスの勢力が強い場合は、同時進行的に生じていた咽喉腫痛や熱感がますます悪化し兼ねない。
やはり主方剤は銀翹散系列であり、初期のほんの一時期、傷寒の程度によって参蘇飲や葛根湯などを、悪寒を改善するだけの目的で使用する程度に留めておくべきであろう。
ところが、むやみに辛温発散の葛根湯や麻黄湯などを継続していると、咽喉腫痛や熱感をマスマス悪化させ兼ねないので、早めに中止して銀翹散系列の方剤を中心に、温病治療に専念すべきであろうということである。
以上は、かなり妥協して書いた部分が多く、現実には傷寒よりも、温熱の病毒(ウイルス)の勢力が強い為に、傷寒より生じた悪寒は多くの場合、放置していても短期間に終わることが多いので、葛根湯や麻黄湯を使用する必要性は甚だ乏しく、むしろ一時的な虚に乗じて侵襲されたことを配慮して、参蘇飲を初期に併用しておく程度で十分かもしれない。
あるいは、多少の悪寒には手をつけず、もっぱら温病に対する治療方法に専念するのみで十分なケースが最も多いのが現実であろう。
銀翹散製剤は各社が製造しているようだが、当然のことながら効果において優劣を感じない訳にはゆかない。製油成分がほとんど飛んでしまっているものもあるからである。
その点ではイスクラ産業の錠剤
天津感冒片(てんしんかんぼうへん) や、顆粒剤なら
涼解楽(りょうかいらく) などは無難で効果が安定している。
なお、
漢方と漢方薬は風邪・流感に本当に有効か? にも関連記事が多いので参照されたし!
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僅か1錠でも速効の天津感冒片の自験例