海馬補腎丸については、既に
八味丸を使用するよりも合理的な六味丸合海馬補腎丸
で述べているので、ここも是非参照して頂きたい。
海馬・鹿茸・鹿腎などの動物性生薬がかなり含有される本方剤は、腎陽を温補する優れた中成薬である。
優れたものには、やや欠点が無いわけではない。
1日2回、1回に10丸ずつとなっている用法・用量でも、時に多過ぎる場合があるので、注意が必要である。
だから、
八味丸を使用するよりも、六味丸に海馬補腎丸を併用したほうが、合理的で配合の自由もきいて便利であることを既に述べたものの、そこでも強調しているように、1回に1~2丸を六味丸に加える程度で十分な場合も多いのである。
ところが、この腎陽温補に優れた海馬補腎丸の効能に感激して、用法・用量の規定の目いっぱい1日合計20丸を使用した場合、時に温まりすぎて、痒みなどを生じることもあるのだから、気をつけたほうが良い。
先日も、常連の中年前の男性で、やや腎陽が虚衰気味になっているので、従来の方剤に海馬補腎丸を少量加えたところ、やや調子が良い。
そこでご本人の希望もあって1回に5丸を1日3回、だから1日合計15丸にするとなお調子がよい。
と、しばらくすると次のような報告、
海馬補腎丸を5錠に増やしたところ下半身に強いかゆみを感じるようになりました。
昨夜もかゆみで目が覚めました。
以前からこの症状は時々出ていたのですが今回はかゆみが強く出ています。
それと鯖アレルギーも以前から時々出ています。
海馬補腎丸を増やして以降鯖を食べていないのでこちらの方はまだわかりませんが出そうな感じがします。
この症状に対して対処法があれば・・・・・・・
ということだったので、一旦中止して、様子をみて少量から再開するかどうかを決めるべきとの返事をした訳である。
以前にも、80過ぎの体重40Kg弱!の高齢男性に、海馬補腎丸1日3回、1回5丸、つまり1日合計15丸で大変お元気になられていたところ、ご自分の勝手な判断で、1回に10丸を1日3回に増量したところ、てきめんに全身が痒くなり、即、中止となった例もある。
40Kg弱の体重に1日合計30丸は、流石に多過ぎるのだが、漢方薬だから安心との過信が生んだ素人療法の恐さでもある。
おだやかな甘温の本方剤も大量に服用すれば一部の辛温性の薬物との相乗作用により大熱となり、辛温大熱の弊害が出現することもあり得るようだ。
だから、常々、海馬補腎丸は良く効く薬だから規定の用法・用量よりも少なめに使用すべきことをお伝えしているが、その理由は動物性生薬によるタンパク質によるものか、上記のようなアレルギー的な副作用が生じる場合が、ときにはあるからである。
追記!
上記の海馬補腎丸を服用後、日頃よりも痒みが強くなったと報告があった男性、昨日23日、当の海馬補腎丸を求めてきたので、中止するなり減量するなりしたはずがどうしたんだ?と問えば、あのまま減量せずに続けてみたが、今はもう平常に戻っていて大丈夫だとのことだ。
身体全体の方は、海馬補腎丸を1回5丸を1日3回、従来の漢方薬類と併用するようになって、調子が上向いており、しかも痒みも治まっているのでこのまま続けたいとのことだった!