大辛・大熱の附子(ぶし)が配合された八味丸は、デリケートな肺系統を損傷しやすいので、長期連用は控えたほうが良い場合が多いことは、すでに述べた。
そこで、それならどうしたらよいかといえば、いろいろな方法があるなかで、手っ取り早く便利で、臨機応変に加減も出来る方法が、タイトルに記載した、
六味丸に海馬補腎丸(かいまほじんがん)を加える方法である。
しかしながら、この海馬補腎丸もかなりな大熱であるので、記載された使用量通りを用いたのでは、強すぎることが多い。
1回10丸、1日2回というのでは多すぎる、ということだ。
1回に1~2丸を1日3回程度でも、六味丸と併用すると、一般の八味丸と同等か、それ以上の効能を発揮することも多いのである。
それでも弱ければ、最高で1回に5丸、1日3回まで増やすこともあるが、多くは比較的少なめで六味丸と相俟って、よく奏功するものである。
小生の薬局では、世間で八味丸証と断定されるような場合こそ、この方法を用いて大いに喜ばれている。
併用であるから、加減が自由自在で、やや強すぎると思えば、即座に減量できて便利なのである。
小生の長年の経験から敢えて言わせてもらえれば、表現は悪いが、八味丸というのはヤバンな方剤に思えてならないのである。
なお、海馬補腎丸については、いずれ新たなカテゴリを設けて、実際的な用い方を述べて見たいと思っている。
この方剤も、用い方によっては極めて重宝である。