ミミズについて、ここでは健康食品業界で噂されるような話をしようという気は毛頭、ない。
あくまで医薬品としてのミミズ、すなわち地竜(ちりゅう)である。
効果・効能は
感冒時の解熱となっている。
確かに、感冒時の高熱には重宝な中薬ではあるが、杓子定規な日本国とて、まさか、感冒時の発熱以外には使ってはならない、というような規則はない、と信じたい。
ここで、こういう日本国における杓子定規さを、敢えて述べるのには、伝統的な優れたものには見向きもしない現代の風潮であるくせに、悪しき慣習でもある「ことだま(言霊)」に支配されるのは、医薬品の効能においてこそ然りで、歯がゆい思いをすることが多々あるからである。
合成医薬品においては、解熱剤といえば、多くは消炎鎮痛効果も兼ね備えていることが多いのだから、生薬、中薬においても、解熱作用のあるものには消炎鎮痛効果を兼ね備えていても、何の不思議も無いであろう。
こんな回りくどい言い方をしたくなるのは、一体に漢方薬関連の医薬品の効能記載において、大いなる不足感を感じることが再々だからである。
効能効果の記載には、随証治療や弁証論治の概念なんて、まるで無視されている日本の現状に歯がゆさを感じるばかりである。
話が大分それたが、要するに、地竜のような優れた消炎鎮痛剤をもっと見直すべきだと言いたいのだ。
もちろん中医学的な弁証論治に基づく適切な使用方法でなければ、十分な効果を発揮できないことも多いが、しかしながら、有用性は難病関連に重宝な消炎作用に優れているから、敢えてここで書くのである。
長年の経験から、膠原病関連の炎症に、これほど重宝なものは無い、とさえ思っている。
単純に地竜だけを用いるような愚は、決して犯してはならない。
あくまで弁証分析の上で用いるべきで、素人が勝手にやってはいけない。
独活寄生湯製剤(独歩丸など)に地竜を加えるなどは、専門家の間では常識であるはずだが、小生の薬局では、リウマチのみならず、多くの膠原病関連の疾患には、部分的な熱証に対して、常に考慮するのが、このミミズというわけである。
もっとも多かったのが、補血活血や袪風除湿に関連した各種方剤に地竜を加えるケース。
このような単純な配合で慢性関節リウマチをほぼ寛解状態に長期間安定させた例は、相当な数に上る。
まだまだ、書けばきりが無いが、たとえば全身性エリテマトーデスと診断された若き女性でも、抗核抗体が最高値にあったが、温経湯にこの地竜を加えて長期間の服用により、ほぼ完全に近い寛解を遂げているなど、まあ、患者さんともども苦労が多いものの、多くの状況で重宝しているのが、この地竜というわけである。
ただし、何度も言うように、素人療法は禁物で、たとえ専門家でも、部分的にでも熱証が見られない場合には使用するのは問題だから、安易な考えで用いてはならない。
特に注意すべきは、部分的に熱証が見られる場合でも、熱証が去って後、いつもまでもダラダラと使用していたら、寒証を増悪されるので、適宜使用すべきで、安易に乱用してはならない。
たとえ著効が得られても、いつまでも続けてよいとは限らないので、中止すべきときは即中止すべきなのである。
やはり、すべては弁証論治なのですよっ!