辛夷清肺湯は、毎日のように使用する汎用方剤である。
効果効能には、鼻づまり・慢性鼻炎・蓄膿症となっており、いかにも鼻だけの漢方薬方剤のような記載であるが、処方名が示すとおり、肺熱を冷ます方剤である。
だから、鼻ばかりでなく肺系統の疾患に、広く応用される方剤なのである。
本方剤を製造されているメーカーのロットから推察するに、日本全国ではそれほど頻繁に使用されている風には見えない。
むしろいまだに「葛根湯加川芎辛夷(かっこんとうかせんきゅうしんい)」などの温性の鼻炎関連方剤のほうがよく使われているらしい。
ところが、小生の薬局では、こちらのほうは殆ど使用する機会がなくなっている。
当方にやってくる前に、どこででも入手できる葛根湯加辛夷川芎を用いて治っているのかもしれない。
呼吸器系疾患における肺熱症状を呈する時に最もよく使用しているが、喀痰が黄色粘稠であれば、真っ先にこの辛夷清肺湯が頭に浮かぶ。
風邪がややこじれて黄痰が出て鼻づまりなど、急性副鼻腔炎らしき時にも繁用する。
とくに咳嗽と同時に胸痛を訴え、同時に黄痰を伴えば、小陥胸湯を主方にすべきだが、このときにも小柴胡湯などでは断じてなく、辛夷清肺湯を併用する。
柴陥湯などは以ての外である。
こんなときに柴陥湯を使っても、治療効果は出ないことが多い。
剤盛堂薬品から発売されている例の
小陥胸湯加味方(結胸散)の出番である。
これに辛夷清肺湯を合方するのが正解なのである。
まだ咽喉腫痛を伴っておれば、銀翹散製剤も必ず併用しておかなければならない。
風邪は多くの場合、ウイルスが原因だから板●根エキスも併用すべきことは中医学の常識である。
細菌感染を伴えば、当然のこととして白●蛇●草のエキスを併用するのも常識である。
腎盂腎炎を併発しそうな時には、これらに猪苓湯も併用せざるを得ないことも稀ではない。
今、サラサラとさりげなく書き連ねたが、このへんに中医学的なこじれてしまった時の風邪やインフルエンザ治療のコツが隠されている。
しばしば風邪やインフルエンザを病院治療にもかかわらず、ひどくこじらせて当方の薬局にかけこむ患者さん達が後を絶たないが、上述の方法などの中医学的、中西医結合的方法を講じるから、治るのである。
しかしながら、上述したことは、ほんの一端に過ぎない。
たとえば、たとえ高熱でなくとも、しつこい熱感を伴った発熱が持続している患者さんには、日本でも有名な解熱薬「地竜(ちりゅう)」を用いる。
これは日本でも立派な医薬品とされているので堂々と書ける。
つまり、
みみず、である。
肺は嬌臓(きょうぞう)であるから、肺熱を生じれば直ぐに肺陰虚を併発しやすい・・・・・・・などと教科書的なことは、専門書に全部記載されているはずだから、あまり書く必要もないだろう。
専門書のどこにでも書いてあるようなことを、いまさらこのようなブログ談話で書いてもあまり意味がないだろう。
辛夷清肺湯は、今後も気が向いたら追記するかもしれない。