本来なら、五苓散(3)と行く所であるが、思い立った時に書いておく必要を感じた上記タイトルの問題、書ける時に、書いておかないと、重要な問題であるから、五苓散を一時中断して、論じておきたい。
なお、五苓散の続編は、どこまで続くか不明であるが、一見、バラバラに書いているようでも、カテゴリでしっかり区分けしているので、五苓散だけをすべて通読されたい場合は、サイトマップや右サイドに設置されている「カテゴリ」欄で、「五苓散」をクリックしてもらえれば、五苓散のすべてが、まとめて通読できるようになっている。
本日の本題に入る。
正式に厚生労働省から医薬品の許可が降りているから、品質には問題なく、同一漢方薬方剤は、各社同様に一定の水準が保たれているか、というと意外にそうでもない。
こういう重大な問題は、決していい加減な根拠で言っているわけではない。
単純なところでは、先ほどの「
五苓散」ひとつにしても、5種類の配合薬物中、
白朮(ビャクジュツ)であるべきところが、蒼朮(ソウジュツ)であったり、あるいは五種類の配合比率がかなり異なっていたり、エキス剤であるのか、散剤であるのか、あるいは両者を合わせた製剤であるとか、これだけでも微妙に、効果効能が異なるものである。
この問題では五苓散中の白朮が蒼朮で代用される問題以上に遥かに重大な懸念は補脾を目的とする補中益気湯や六君子湯などで蒼朮で代用されることは看過できない部分がある。
その詳細は本ブログの
補中益気湯に白朮ではなく蒼朮を配合した医療用漢方製剤は明らかに錯誤
に詳細に指摘している問題である。
白朮と蒼朮の錯誤問題に加えてしばしば問題となるのが、本来、単純に乾燥生姜であるべき「乾姜」が、日本では、アタリマエのように飴色になるまで蒸して加工した煨姜(ワイキョウ)もどきが使用されていることである。
しかも、その煨姜モドキを「乾姜」と錯誤している状況が日本の漢方界なのであるから、大変由々しき問題である。
この場合、原料が同じ「生姜(ショウキョウ)」から作られるのだから、という安易な油断が隠されていたのではないだろうか?
この問題については、他サイトでもホドホド論じた問題なので、通読をオススメする。
漢方と漢方薬:生姜と乾姜の錯誤
生姜と乾姜の錯誤による無効経験
生姜と乾姜(1) 生姜と乾姜(2)
日本漢方における生姜と乾姜の錯誤
半夏瀉心湯 (はんげしゃしんとう)
日本国内における乾姜の錯誤問題についての御質問
また、猪苓湯中の阿膠(アキョウ)の配合の仕方一つによって生じる者と思われる、各社で効能効果に違いが出てくる問題など、天然材料を原料とする漢方薬のデリケートさが、常につきまとうのである。
それゆえ、エキス剤にしても、煎薬を用いる場合にしても、方剤ごとの特徴を、各社のものを、それぞれに検討して、より適切な配合のものを選ぶようにしなければ、極端な場合は、効くはずのものが、無効におわることすら、有り得るのである。