いまさら、五苓散ね~~~、と言うほど、繁用方剤である。
まず、漢方医学・薬学に入門当初、真っ先に覚えるのが、「葛根湯」と「五苓散」、それに昨今評判の悪い「小柴胡湯(しょうさいことう)」であろう。
それ程よく使用され、日本漢方も中医学派も、流派とは無関係に、繁用されやすい。
それだけ、適応証が多い、ということになる。
ここ十年以上は、難病系統主体のご相談が多いだけに、以前ほどではないが、それでもやはり、複雑な配合方剤となる場合でも、主方剤として使用していることもある。
桂枝の代わりに肉桂が配合されるのが、日本の五苓散の特徴であるが、適応症で無い人が、間違って服用しても、それほど強い副作用が出るわけではない。
まれに、シナモン(肉桂)に敏感な人が、皮膚湿疹を生じる場合がある。
それでも、三十数年間の経験でほんの2~3人のことで、いずれも配合方剤を工夫することで、最終的には、過敏反応は消失してしまった。
但し、根本的に肉桂アレルギーを発するような人には、肉桂を除去して使用すべきである。
この五苓散ばかりは、色んな意味で、様々な応用方法があり、また、配合生薬中の「白朮(びゃくじゅつ)」が、「蒼朮(そうじゅつ)」を使用する漢方製剤があったり、「桂枝」であるべきところが、日本には腎陽・心陽・脾陽を特に温める作用の「肉桂」が使用されているなど、書こうと思えば、様々な方向から、どのようにもダラダラと書き続けてしまえるほど、話題はつきない。
茯苓(ぶくりょう)にしても、赤茯苓か、白茯苓か・・・・・・。
また、原方通りの散剤がいいのか、あるいは煎薬か?
だから、この五苓散に関しては、少し長くなって、一回分の投稿くらいでは、終らないかもしれない。
B型人間の欠点で、気まぐれ男であるから、無意識に面倒になると、ほどほどでやめてしまう場合がある。
これまでもそうだが、もちろん真剣に頑張っているつもりでも、複雑な領域になると、まっ、このくらいでいいか、どうせ、複雑難解なことを書き続けると、専門誌に発表しているわけでもなし、ネットでは、これ以上の専門的なことは、誰も読まないだろう、なんて、勝手なことを自分に言い訳しながら、うまく切り上げて、逃げてしまったことが多いような気がする。
結局は、こうやって、ダラダラと気楽に書いているようでも、裏には弁証論治という、かなり厳密な法則を前提に考えねばならない部分を意識しだすと、うかつなことを書いて、誤解されるのも困るし、などと、やはり、早く切り上げる口実を、無意識に作ったりしている。
チョット、余計な雑談が多くなりすぎたが、本論に戻ると、五苓散は、単純化して言えば、気軽な利尿剤で、身体における不要な水分を除去する便利な方剤である。
配合薬物から考えても、猪苓(ちょれい)と茯苓(ぶくりょう)が、サルノコシカケ科のキノコ類であり、あの特有の香りのある肉桂、つまりシナモンである。
これに、沢瀉(たくしゃ)と白朮で、合計5味。
肉桂アレルギーを呈さない限りは、ほんとうにやさしい漢方薬であるが、証に嵌ると、まずまず良好な効き目を発揮してくれ、西洋医学では不可能なことを成し遂げ、この三十数年間に、どれだけの人に喜ばれたことか!
ということで、具体的なことは、今回は何も述べずに、上記を序論として、次回からは、比較的具体的な話を交えて、また、ダラダラとやらかすことになるだろう、と思うのであります。
なにせ、今日は、日曜日なのです。
水を飲んでは嘔吐する、という典型的な五苓散証、専門的には「水逆(すいぎゃく)」の証候を呈していた孫も、無事、簡単に治癒して、さきほど飛行機に乗って帰って行ったところだ。
急性症状で、五苓散が適応する時の効き目は、実に素晴らしい。
同様な経験は、日本全国、かなりな人数になると思われる。
五苓散のすさまじい効き目に感激して、漢方薬にのめり込んだ、という話もよく聞かれる。
というわけで、また次回、五苓散を続けます。